大腸内視鏡検査

肛門から大腸の中に内視鏡(大腸用の胃カメラのようなファイースコープ)を挿入して大腸を調べる検査です。

 腫瘍(大腸癌やポリープ)や炎症の有無をみることができます。 もし、腫瘍があった場合、悪性か良性かどうかをしらべるために腫瘍の一部をとって病理組織検査(組織を顕微鏡でみて、どういう性格の腫瘍かを調べる)に提出したり、 御希望の方へは、適応があれば内視鏡的に切除(ポリペクトミー)することができます。

 大腸がん検診(便潜血反応)で異常を指摘された方、血便のあった方、最近便が細くなっている方、 便秘がひどくなっている方などへは検査をおすすめします。検査時、大腸内に便が残っておれば十分な検査ができませんので前処置が必要となります。検査当日、腸管洗浄液を1リッターから2リッター飲んでいただいて(飲んでいただいた洗浄液は腸で吸収されることなく肛門からでてきます)大腸内をきれにしてから検査します(検査の前処置には他の方法もあります)。

 検査は通常15分から25分で終わり、多くの場合大きな苦痛もありませんが、腸の癒着している方や、腸の長い方は少し痛いことがありますので当院では軽い鎮痛剤の使用をおすすめしております。この鎮痛剤は検査中の意識の低下(ボーとしたり意識が薄れる)もなく、検査後もほとんどの方は無症状ですのでご安心ください。 


大腸ポリープ

大腸内にいぼのように隆起した病変です。主には腺腫と過形成性ポリープがあります。腺腫は大きくなると(10mm以上)その一部が癌化することがあります。ある程度以上の大きさのポリープは内視鏡的切除しておいたほうがよいです。

大腸癌

最近増加しつつある病気です。初期は無症状ですが、肛門からの出血、便が細くなる、便秘の増悪等の症状がみられます。腺腫(良性腫瘍の一種)の一部が癌化して大きくなる場合と最初から小さな癌が出現し、増大する場合があります。早期発見が重要です。

急性腸炎

下痢、腹痛、発熱、時には嘔吐、血便を伴います。ウイルスや細菌(サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などの食中毒菌)感染によりおこります。

虚血性腸炎

典型的には突然の腹痛がおこり、その後下痢、下血(肛門からの出血、赤い血便)がみられます。何らかの理由(便秘等)で大腸の腸管内の圧力が高くなり腸管を養う動脈の血流が一時的に遮断されて発症するとされています。動脈硬化のおこる中年以降の方が多いですが、若い方にもみられます。多くは内科的に治療されますが、まれに外科的治療が必要となる場合があります。

大腸憩室症

腸管内腔が外側に向かって飛び出している病変です。先天的な場合と加齢に伴い、出現増加する場合があります。また多発することもあります。この飛び出しの底は薄いため(筋層がない)炎症(憩室炎)がおこると限局的な腹膜炎を併発することがあります。まれに出血することもあります(憩室出血)。単に憩室があるだけで炎症や出血のない場合は治療対象になりません。

過敏性腸症候群

内視鏡検査をしても大腸粘膜には明らかな病変がありませんが、通便異常(下痢、便秘)、腹痛を繰り返します。ストレスや自律神経の異常等による腸管機能障害によるものと考えられています。症状にあわした内服薬による治療をおこないます。

抗生物質による腸炎

抗生物質使用により右側の大腸に出血性の腸炎(薬剤性出血性腸炎)がおこり、赤い下血や腹痛がみられることがあります。この病気はどちらかといえば比較的若い人にみられます。これとは別に抗生物質の使用により大腸に偽膜という白い斑点が多発し、下痢、発熱が持続する腸炎もあります。(偽膜性腸炎)。こちらはどちらかと言えば高齢の方にみられます。

潰瘍性大腸炎

大腸に慢性的な炎症(潰瘍)がおこり、下痢、血便、腹痛、発熱が慢性的にみられる病気です。戦後増加しつつあり、若い人に発症することが多く、その発症には免疫学的な機序が考えられています。アサコール、ペンタサ、サラゾピリンといった内服薬、注腸剤、座薬の使用や必要に応じて寛解導入の為にステロイドホルモンの内服、座薬、注腸、注射を併用します。このほかには血球除去療法(大腸粘膜に炎症をもたらす活性化された白血球を血液中から選択的に除去する)や免疫抑制剤があります。ある程度以上の強い炎症がある場合や持続再燃する場合はステロイド依存を防ぐためにも積極的な使用が望ましい場合があります。内科的な治療に抵抗する場合、外科的治療法(回腸肛門(管)吻合、回腸嚢造設術)が選択される場合もあります。

クローン病

大腸、小腸(その他消化管全体)に慢性的な炎症(潰瘍)のおこる病気で、これも若い人の発症が多い病気です。 大腸に病変があれば下痢、下血、腹痛等がみられ、小腸に病変があれば腹痛、体重減少等がみられます。肛門病変(痔瘻など)を合併することも多く、肛門病変が初発症状であることもあります。この病気も免疫学的異常が原因と考えられています。最近では治療の中心は生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)となります。腸管の狭窄や内瘻(腸管同士が炎症のため癒着し、本来の腸管腔同士のあいだにバイパスができる)のため外科的治療が必要となることもあります。