発熱について

保護者のお話の内容と診察結果から熱の原因がはっきりわかる場合(通常の風邪や急性胃腸炎、ヘルパンギーナなど)は問題ありませんが、原因のはっきりしない場合や症状の強い場合はいくつかの検査が必要となることがあります。

発熱の多くの原因はウイルス感染ですが、中には細菌感染による場合もあります。

細菌感染の場合は抗生剤が必要になります(通常のウイルス性の風邪の場合は抗生剤は不要ですし、効きません)。

また、ウイルス性の風邪でも特に熱が長引く場合、経過中に肺炎、中耳炎などの合併(はじめにはなくても途中から併発する)がないかどうかを数日おきに診察してチエックする必要があります。

特に全身状態の変化がある場合は(急に元気がなくなりぐったりしたり、食欲や哺乳の低下が見られた場合など)再度受診してください。

 

細菌:

高校や中学校の理科室にある普通の顕微鏡でみえる病原体。適切な抗生剤投薬で細菌は死んで、病気はなおります。たとえばA群溶血連鎖球菌(溶連菌)による咽頭炎や多くの上部尿路感染症などが細菌感染による感染症です。なおマイコプラズマ(気管支炎や肺炎をおこす病原体)のように細菌でもなくウイルスでもない病原体で、ある特定の抗生剤が有効な感染症があります。不必要な抗生剤投薬により、細菌は抗生剤に対する抵抗力(耐性)をもつようになりますので、抗生剤投薬は必要なときにのみに行います。

 

ウイルス:

細菌よりずっと小さい病原体で電子顕微鏡でないと見えません。ウイルスのうち有効な薬があるのは、小児科領域ではインフルエンザと水痘(みずぼうそう)くらいで、ほかのウイルス感染の場合症状を緩和するための薬の処方が中心となります。

 


血液検査:

特に3歳未満の39度以上の発熱、1歳未満の38.5度以上の原因の確定しにくい発熱の場合、原因がウイルス感染によるものか、細菌感染によるものかを判断する手助けとして炎症反応を調べたほうがよい場合があります(足の裏を細い針で少し突いて簡単に採血できます。結果は数分後にわかります)。高熱があっても、比較的全身状態がたもたれて元気な乳幼児の場合はウイルス感染のことが多いですが(例えば乳児の突発性発疹や夏風邪のような)、ごくまれには細菌性髄膜炎などの初期の可能性もありますので、血液検査の結果などを参考にして投薬内容を考えたり、その後全身状態の変化がないかどうか注意深く経過観察します。

 

尿検査:

尿路感染の有無をみるため。細菌が膀胱から腎臓に入り腎盂腎炎をおこすと発熱の原因になります。とくに乳幼児の発熱の原因のひとつとして重要です(特に7カ月未満の男児と6歳未の女児の場合)。乳幼児の尿のとり方はナースが説明します(専用の尿とりパットを外陰部につけて採尿します。つける前に外陰部をぬれたやわらかいテッシュできっちりと清拭し、そのあとかわいたテッシュでふいてください。途中で便が出た場合はきっちりと検査できません)。

尿路感染が考えられる場合は腹部超音波検査で腎臓や膀胱を観察します(膀胱尿管逆流による水腎症や低形成腎のような先天性の腎臓の異常がないかどうかをみます)。繰り返す場合は膀胱尿管逆流(尿は腎臓でつくられて尿管を通って膀胱に流れますが、尿が膀胱から尿管、腎臓へ逆流してしまう。)の有無などの泌尿器科的な専門検査が必要です。

尿路感染は排尿機能が未熟なことが一因ですが、男児の乳児の場合強度の包茎が原因となることもあります。

なお尿路感染があった場合、約6か月間は、次回発熱時(ふたたび尿路感染がおこっていないかどうかみるために)尿検査が必要です。

再発は6か月以内に多く、再発早期発見のために、月1回程度の尿検査が好ましいです。

 

胸部レントゲン:

肺炎が疑われる場合施行します。

 

溶血連鎖球菌(溶連菌)の検査:

細菌が原因でおこる咽頭炎(のどかぜ)です。診察時の咽頭所見(のどの色)からこの病気が疑われた場合、のどの粘液を綿棒とって菌の有無を調べます。約10分で結果がわかります。この菌がいる場合は抗生剤をきっちりと10日間飲む必要性があります(中途半端にすると菌が残って健康保菌者となったり、再発することがあります)兄弟間で感染することがありますので、家族内にのどいたや発熱の方がいないかどうか観察してください。抗生剤を服用すれば24時間後には他人へうつりにくくなりますので、保育所学校へは、症状軽快しておれば24時間後には保育所学校へ通園可能となります。

 

その他インフルエンザウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスの検査:

熱の原因としてこれらの感染症が疑われる場合施行します。

 

発熱時の対処法

38度5分以上あり、熱のためしんどいとき(熱のためぐったりしている、水分をとらない、夜ねない)は処方された解熱剤の座薬(もしくは内服薬)を使用してください。熱があってもしんどがっていない場合は使用する必要ありません。単に高熱であるだけのために、脳障害がおこることはありません。逆に熱がたかくなくても全身状態がわるいときは重大な事態の場合もあります。解熱剤の座薬(アルピニー座薬もしくはアンヒバ座薬は体重かける10倍の量使用します。)もしくは内服薬(カロナール)は6-8時間あけて日に3回までです。何回も座薬を使用しなければならないときは翌日受診してください。